せたカフェでは、2016年6月から不定期(2〜3か月に1度)、全国から「地域包括ケア」を実践する達人をお呼びし、少人数でゆったりと討論や意見交換をする「まるごとカフェ」をスタートしました。
第1回「幸手モデル」に学ぶ
ゲスト:中野智紀さん(東埼玉総合病院医師)
小泉圭司さん(コミュニティデザイナー)
日時:6月4日 16:00〜21:00
場所:シモキタステーション
参加費:4000円(食事・ドリンク付き)
定員:30名限定
地域包括ケアのあり方を学びながら、少人数でゆったりと討論や情報交換ができる場をつくり、それぞれの地域での「地域まるごとケア」づくりにつなげようと、せたカフェでは新企画「まるごとカフェ」をスタートしました。最初にお呼びしたゲストは、埼玉県幸手市で東埼玉総合病院の在宅医療連携拠点“菜の花”を拠点に、住民とともに「幸手モデル」をつくっている中野智紀医師と、相棒の”コミュニティデザイナー”の小泉圭司さんです。
「幸手」の取り組みを知ったのは5年前。秋山美紀さんの「コミュニティヘルスのある社会へ」を読んだのがきっかけでした。その後、有志の研究会で「幸手」と滋賀県東近江市の「三方よし」を「地域包括ケアにおける住民参加」の好事例として取り上げ、何度か実際に幸手を訪ねてお二人にお話を聞いたり、住民調査に参加させてもらったりしながら、世田谷でじっくりお話を聞くチャンスをつくる機会を狙っていました。
中野さんが迷子になって直前の到着になったため、最初のスピーカーは小泉さん。シャッター商店街にコミュニティカフェ「元気スタンドプリズム」をオープンし、食事の提供、暮らしの保健室との提携、セニアカーのレンタル、地域で支え合う「幸せ手伝い隊」、人の地域資源をつなげるネットワーク「しあわせすぎステーション」、そして「地域丸ごとアミューズメント」と名付けたイベント、商店街の活性化にも役立つ「見守りスタンプラリー」・・・と、次から次へと広がるアイディアとその実践力に、刺激を受けた参加者の目が、次第にランランと輝いてきます。
「たいてい時間オーバーする」とお聞きしたので、「時間厳守!」とお願いしたところ、ブンブン飛ばした小泉さん。所定時間より10分短縮で終了。そこで、後半にまとめて行う予定だった質問を受け付けたら、参加者から矢継ぎ早の質問が続き、あっという間に時間オーバー。中野さんの話に移ります。
最初に登場したのは、犬のブリーダーの末期がん患者と、生まれたばかりの子犬のエピソートでした。ブリーダーを続けるかやめるか、という本人と奥さんの選択の中で「この家族をいちばん支えているのは、ワンちゃんかもしれません」と語り始めた中野さん。「住民の人生へ断片的にしか関わることができない専門職が、住民のライフコース全体を支えることはできない」と言いきって、参加者の関心をわしづかみしました。
記憶に残った中野さんのコメントをいくつか。
「地域包括ケアの目標は、医療介護の一体的提供や地域との連携、多職種連携自体ではなく、住み慣れた地域で住民が最後まで誰もが暮らし続けられること。連携はその結果であって目的ではない」
「新しい総合事業は野暮な仕組み。『住民を巻き込む』というのは、地域包括ケアの考え方からすれば、全くの誤りで、行政は住民に巻き込まれるべき。そもそも、なぜ行政がまちづくりにまで口を出してくるのか疑問。行政は住民の動きを後方支援するのが役割」
「新総合事業を地域包括ケアとつなげるのもおかしい。『住民主体』とされる新事業は、本来一体であるはずの地域支え合いと専門職や行政との連携を制度上引き離し、さらに地域から奪う仕組みにほかならない」
「地域包括ケアは隣の人を助けたいと思う人を、支援するところから始まる。行政や病院ができるのはその支援だと思う」
「「地域包括ケアの目標は、医療介護の一体的提供や多職種連携自体ではなく、住み慣れた地域で住民が最後まで誰もが暮らし続けられること。連携はその結果であって目的ではない」
「『ふ』つうに、『く』らせる、『し』あわせを支える全てが広義の福祉でありケアなんだ。ケアすることが目的ではない。ケアする社会をつくっていかないと」
次回は、9月24日(土)16:00から、大田区「みまーも」の澤登さんをお招きする予定です。会場は若林「デイホームみのりの庭」に代わります。今後も、楽しいラインナップを考えていますので、お楽しみに。